「空気を読み、未来を描く」 ――空力エンジニアから事業戦略へ。

「空気を読み、未来を描く」 ――空力エンジニアから事業戦略へ。

技術で経営を語るキャリア論 大学では熱流体工学を専攻し、研究テーマは乱流・境界層・エネルギー輸送。 幼い頃から空を飛ぶものに惹かれ、自然な流れでキャリアのスタート地点は航空機開発だった。

■ キャリアの原点は「空を支配する数式」 新卒で配属されたのは航空機の空力設計部門。

数年にわたり、翼型設計、揚抗比最適化、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析を中心に、飛行性能を支える設計業務に携わった。

その後、担当はジェットエンジン分野へと移る。

圧縮機・タービンの設計、熱負荷評価、**寿命解析(Life Cycle Assessment / Creep・Fatigue解析)**など、より過酷な物理現象と向き合う日々。 ここで培われたのは、「机上の理論」と「実機の現実」をつなぐ視点だった。

さらにキャリアは空力に関する基礎研究へ。

風洞試験、流れの可視化、PIV(Particle Image Velocimetry)などを用い、「空気そのものを“見る”技術」を基盤技術として確立していく。

■ 30代半ば、立ち止まった時間が視野を広げた

順調に見えた技術者人生だったが、30代半ばで転機が訪れる。

所属していた基礎研究所の閉鎖。 技術者としてのアイデンティティと、組織の論理。その狭間で一度、立ち止まった。 選んだのは学び直しだった。 大学院に再入学し、その後経営大学院(MBA)を修了。 ここで身につけたのは、技術を「価値」に変換するための言語―― 経営戦略、ファイナンス、マーケティング、ポートフォリオマネジメントだった。

■ 38歳、エンジニアがマーケティングに挑む

38歳のとき、社内公募で事業戦略部門へ異動。 純粋な技術畑から、マーケティング・事業企画の世界へと舵を切る。 担当したのは、電動化を軸とした事業ポートフォリオ戦略。 技術ロードマップと市場動向を重ね合わせ、 ・どの技術に投資すべきか ・どの市場で勝ち筋があるのか を、データとロジックで描いていく。

もともと興味のあった商品企画にも携わり、顧客価値から逆算したプロダクト設計、STP分析、KPI設計などを実践。 その後は電動車推進の戦略部門へと異動し、より全社的な視点で意思決定に関わる立場となった。

■ サステナビリティと「全体最適」のマネジメントへ

近年は、サステナビリティ、ESG、ステークホルダー資本主義といったテーマにも深く関与。 技術・事業・社会の三位一体での最適解を模索し、 「作れるか」ではなく「続けられるか」「支持されるか」を問う立場へと進化している。

■ 大切にしている価値観

1. 理念なき行動は凶器、行動なき理念は無価値

企画・戦略職に就いてから、創業者の言葉の重みを改めて実感するようになった。 理念は飾るものではなく、意思決定の“フィルター”であるべきだと考えている。

2. 上も下も関係ない。物理現象として説明できるか

エンジニアとしての原点。 肩書きではなく、再現性と因果関係。 解があるかどうか、それだけが武器になる世界で生きてきた。

3. 一つでいいから、絶対に負けない専門性を持て

それでも勝てないなら、もう一つ持て。 専門性は掛け算で効いてくる。 視点を変え、タイミングを見極める――特に若い時期には重要だと語る。

■ 今後の展望

本心では、いつまでも第一線で戦い続けたい。 大人数をマネジメントするよりも、可能な限り現場に近い場所で、 技術と事業の間に立ち、アイデアを出し続けたい。 将来的には、コーポレートベンチャーへの挑戦も視野に入れている。 大企業で培った技術・戦略・実装力を、より機動的な形で社会に還元するために。 技術を知り、経営を学び、現場を愛する。

彼の強みは、「空気を読む」のではなく、「空気を理解してきた」ことにある。

 

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