多様な働き方を受け入れる組織は、採用より先に業務を見直す
多様な働き方を受け入れる組織づくりは、福利厚生や制度の話だけではありません。人手不足の現場では、まず業務を分解し、社内で抱え続ける仕事と外部に任せる仕事を切り分けることが出発点になります。採用できるまで待つのではなく、今いる人の時間を空ける発想です。
今回取り上げるのは、ある福岡県の食品製造業、従業員28名の会社です。営業担当は2名、事務担当は3名。問い合わせ対応、見積書作成、展示会後の名刺整理、既存顧客へのフォローが同時に発生し、月末には残業が1人あたり月20時間前後まで膨らんでいました。本記事の事例は一般的に起こりうるモデルケースです。
この会社が行ったのは、人を新たに1人採ることではなく、営業と事務の周辺業務を外部チームに預けることでした。リスト作成、フォーム営業、初回架電、CRM入力、受注前後の書類整理を小さく切り出し、社内の2名は商談と顧客対応に集中。多様な働き方を受け入れる組織とは、在宅・時短・外部人材を特別扱いする組織ではなく、仕事の流れを見える化して、場所や時間に依存しない形に変えられる組織だといえます。
課題は、営業不足ではなく営業前後の詰まりだった
この食品製造業では、新規開拓そのものへの意欲はありました。月に1回の展示会、既存顧客からの紹介、Web問い合わせがあり、営業機会はゼロではありません。ところが、展示会で獲得した名刺120件のうち、2週間以内に連絡できたのは約45件。問い合わせメールへの初回返信も、繁忙期には48時間以上かかることがありました。
営業担当2名は、商談、納期確認、クレーム一次対応、見積作成まで抱えていました。事務担当3名も、請求書、納品書、出荷データの入力で手一杯。結果として、売上につながる前段階のリスト整備や追客が後回しになっていたのです。多様な働き方を受け入れる組織を目指す以前に、誰が見ても業務の置き場が曖昧な状態でした。
よくある誤解は、営業成果が伸びない理由を営業担当の人数だけで考えてしまうことです。実際には、商談の前に必要な作業が多くあります。たとえば、見込み顧客リストの重複確認、問い合わせ内容の分類、架電結果の記録、次回連絡日の設定。1件あたり5分でも、100件あれば500分、つまり8時間以上です。ここを社内の中心メンバーが抱えると、肝心の提案時間が削られます。
取り組み1:営業支援を4つに分けて、外部チームに渡した
最初に行ったのは、営業活動を4つの工程に分けることでした。すべてを丸投げするのではなく、社内が判断すべき仕事と、手順化できる仕事を分ける設計です。KIKKAKE編集部が見てきた現場でも、この切り分けがあるかどうかで外注の成否は大きく変わります。
- 見込み顧客リストの整備と重複削除
- 問い合わせフォームへの一次アプローチ
- 初回架電と不在時の再連絡管理
- CRMへの履歴入力と次回アクション設定
営業担当が担うのは、温度感の高い顧客との商談、価格や納期の判断、関係構築に絞りました。外部チームは1日2時間から稼働し、週5日で営業前後の作業を進めます。たとえば月曜に展示会名刺を整理し、火曜にフォーム送信、水曜と木曜に架電、金曜にCRMの未入力を確認する流れです。営業代行・営業支援のような外部活用は、契約獲得だけでなく、商談化までの地味な工程を止めないためにも使えます。
ここで手を動かすのは、出産・育児でキャリアを中断した経験を持つママ人材です。前職で営業事務やカスタマーサポートを経験していた人が、リスト確認や電話後の記録を担当すると、初日から見るべき項目が分かります。限られた時間で優先順位をつける働き方に慣れているため、50件のリストから先に当たるべき10件を見つける判断も速い。多様な働き方を受け入れる組織は、こうした実務経験を社内外の区別なく活かせる状態をつくります。
取り組み2:BPOで事務作業を止まらない流れに変えた
営業支援と同時に進めたのが、バックオフィス業務のBPO化です。対象にしたのは、見積書の下書き、納品書データの転記、請求前チェック、顧客マスタの更新でした。どれも会社に必要な仕事ですが、担当者でなければ判断できない部分と、ルール通りに進められる部分が混在していました。
最初の2週間は、業務の棚卸しに使いました。どのファイルを見て、どの順番で入力し、どの時点で社内確認を入れるのか。作業時間を15分単位で測り、1件あたりの所要時間とミスが起きやすい箇所を記録します。その後、チェックリストを1枚、作業マニュアルを5ページにまとめました。BPOによる業務フロー設計は、単に人を外から足すのではなく、再現できる流れをつくる点に意味があります。
ママ人材のチーム制も効きました。全国フルリモートで複数名が同じマニュアルを共有するため、1人が子どもの急な発熱で稼働できない日があっても、別のメンバーが進捗を引き継げます。属人化を減らす目的で、入力ルールは表記ゆれまで決めました。株式会社、(株)、カブシキガイシャが混ざるだけでも検索性は落ちます。多様な働き方を受け入れる組織では、自由に働けることと、品質が安定することを両立させる仕組みが欠かせません。事務代行の範囲を明確にすると、社内担当者の不安も小さくなります。
数字で見る変化:商談時間が増え、残業が減った
運用開始から3か月後、もっとも大きく変わったのは営業担当の時間の使い方でした。展示会後の名刺整理は平均7日遅れから翌営業日対応へ。問い合わせへの初回返信は最長48時間から、営業日の平均8時間以内に短縮されました。CRM入力の当日完了率は約35%から90%前後まで改善。入力が早くなると、次回連絡日を逃しにくくなります。
商談数にも変化が出ました。月6件前後だった新規商談は、3か月目に月11件まで増加。これは、営業担当が急に話し上手になったからではなく、商談前の接点づくりが途切れなくなったためです。フォーム営業、架電、不在時の再連絡、資料送付後の確認という細かな工程が、毎週同じリズムで回るようになりました。
バックオフィスでは、月末の残業時間が1人あたり20時間前後から16時間前後へ、約20%減りました。劇的な削減ではありませんが、繁忙期の疲労感は明らかに違います。事務担当者が請求前チェックに集中できるようになり、転記ミスの差し戻しも月12件から5件に減少。多様な働き方を受け入れる組織の成果は、制度名ではなく、こうした小さな数字の積み上げに表れます。
このモデルケースでは、外部チームに渡した業務は1日2〜3時間分でした。フルタイム1名分を一気に置き換えたわけではありません。だからこそ社内の抵抗が少なく、改善点も毎週30分の定例で調整できました。
多様な働き方を受け入れる組織に必要な3つの設計
多様な働き方を受け入れる組織に必要なのは、寛容さだけではありません。現場で回る形にするには、業務の粒度、情報共有、判断基準の3つをそろえる必要があります。ここが曖昧なまま外注すると、社内確認が増え、かえって忙しくなることもあります。
1つ目は、業務を30分以内の単位に分けること。リスト作成、フォーム送信、架電履歴入力、請求データ確認のように小さく切ると、在宅や短時間稼働でも成果物を確認しやすくなります。2つ目は、完了条件を言葉にすることです。入力した、送った、電話しただけでは不十分で、どの項目まで埋まっていれば完了なのかを決めます。3つ目は、迷ったときの相談ルート。価格判断、クレーム、納期変更などは社内に戻す線引きが必要です。
家庭と両立しながら働いてきたママ人材は、時間の使い方に対する感度が高い傾向があります。10分で済む確認と、社内判断が必要な確認を分ける。午前中に顧客接点をつくり、午後に記録を整える。こうした段取りは、営業支援やBPOの現場でそのまま価値になります。多様な働き方を受け入れる組織は、人に合わせて仕事を曖昧にするのではなく、仕事を明確にすることで多様な人が関われる余地を広げます。
導入の順番に不安がある場合は、最初から大きく任せない方法もあります。業務の洗い出し、試験運用、改善、継続判断という流れを置くと、社内メンバーも変化を受け止めやすくなります。ご利用の流れを確認しながら、1業務・2週間・週数時間のように小さく始める設計が現実的です。
よくある質問
多様な働き方を受け入れる組織づくりを考えるとき、最初に気になるのは費用、期間、対象業務です。ここでは、中小企業の経営者や管理部門から出やすい疑問に絞って答えます。
費用はどのくらいから考えればいいですか?
KIKKAKEの料金は、ママ応援スポンサー会費として月額55,000円(税込)+依頼業務の実費です。成果報酬はありません。詳しくは料金プランで確認できます。
何週間くらいで動き出せますか?
業務内容が整理されていれば、初回打ち合わせ後に小さな範囲から始めやすくなります。最初の2週間は、手順確認と改善点の洗い出しに使うと安定します。
従業員10人前後の会社でも対象になりますか?
対象になります。むしろ少人数の会社ほど、営業担当や事務担当が複数業務を抱えがちです。1日1〜2時間分の定型業務から切り出す方法があります。
何を任せるか決まっていなくても相談できますか?
相談可能です。問い合わせ対応、リスト作成、CRM入力、書類作成などを一緒に棚卸しし、社内に残す業務と外へ出す業務を分ける進め方が向いています。


